読書感想 -『牧師館の殺人』 他作品含めマープル像を振り返る

アガサ・クリスティの名探偵おばあちゃん、ミス・マープル。
シリーズの有名どころを読んできたので、原点の『牧師館の殺人』を読んでみました。

マープルシリーズの長編一作目ということで、実はあまり期待してなかったんです。
・・・期待を裏切ってかなり満足度の高い作品でした!

この作品で読むマープルの印象が他の作品とかなり異なっており、今回はネタバレ無しで私が今まで読んできたマープルものの作品から感じるマープルの人物像をラフに考察していきたいと思います。

もくじ

1926年:『アクロイド殺し』

こちらはマープルものではないのであらすじは割愛します。
マープルの前身(?)であるキャロラインが描かれた作品です。

読書感想 -『アクロイド殺し』 宵と泡沫 →

主人公の姉のキャロラインは家にいながら、噂話によって村のほとんどの情報を得ていました。その収集速度は並外れており、何かがあった数時間内には彼女の耳にその情報が入っている、というキャラクターです。

キャロラインは「噂好きの明るいおばさん」という雰囲気のキャラです。
噂から色々と想像を膨らませて物語をかき乱すんですが、それが痛快で面白い。
マープルは「陰」なキャラですが、キャロラインは「陽」のキャラです。

1927年〜1932年:『火曜クラブ』

火曜クラブ(クリスティー文庫) amazon.co.jp ↗
ミス・マープルの甥で作家のレイモンドたちが始めた「火曜クラブ」――火曜の夜にそれぞれが「自分だけが真相を知る謎」を持ち寄り、推理を競い合う。警察官も作家も外す答えを、編み物をしながら聞いていたマープルが「村にもこんな人がいましてね」と推理していく。

『火曜クラブ』あらすじ

連作短編集のため、それぞれの話の印象は薄いが、マープルのキャラクターが強烈に印象に残る安楽椅子探偵作品の代表作です。

ここで描かれるマープル像はレイモンドがいることもあり、「優しいおばあちゃん」として描かれていると思います。

一見どこにでもいるおばあちゃんが、長い人生で出会ってきた人々の人物像を事細かに分析し、自分の中のデータベースに格納している。
「その人物の行動原理が分かれば、誰が犯人かは自ずとわかる」というマープルの推理の仕方がよくわかる作品群です。

1930年:『牧師館の殺人』

牧師館の殺人(クリスティー文庫) amazon.co.jp ↗
セント・メアリ・ミード村の嫌われ者プロザロー大佐が牧師館の書斎で射殺される。牧師館の隣に住むミス・マープルが、庭越しの観察と村の人間たちへの洞察で真相に迫る。

『牧師館の殺人』あらすじ

今回読んでみて、マープルものを初めて読む人はこの作品から読むのがいいのではと思いました。(まだ全作品読んでないので、暫定です)
他の作品だと、あまりマープルが出てこなかったり、すでに名探偵としての地位を築いている中での話なので、周りから見たマープル像に触れることが少ないような気がします。

この作品でのマープルは、自分で長時間庭いじりをするくらい、他の作品より若さを感じます。
小さい村では、どんな女性も噂話が好きなもの。噂好きの老婆たちの1人としてマープルは描かれます。

事件に関連しているように思える人々の行動、その中で本当に事件に関係しているのは誰なのか。
ただの噂好きのおばあちゃんだと思っていたマープルだけが犯人に迫ることができる、その不思議さを体感できます。

語り手が牧師なのも良く、当事者目線で警察の動きを追えるのも面白いです。
この牧師だけがマープルの本質を見抜いているのも、物語をドラマチックにしているポイントかなと思います。
「私の趣味は、人間性の観察なんですの」この一言がマープルもの全てを物語ってますよね。

  • 1942年:『書斎の死体』(未読)
  • 1943年:『動く指』(未読)

1950年:『予告殺人』

予告殺人(クリスティー文庫) amazon.co.jp ↗
村の地方紙に「殺人をお知らせします。金曜午後6時30分、リトル・パドックスにて」と広告が載る。ゲームと思い集まった村人の前で明かりが消え、本当に銃声が響く。近くに滞在中のミス・マープルが、村の人間関係から真相に迫る。

『予告殺人』あらすじ

この作品は物語として面白い。さまざまな嘘が真相を隠し、あの日リトル・パドックスに集まった人々全ての足跡を想像させます。

その分、事件を解き明かすマープルの存在感は薄いです。
この話ではマープルは部外者なんですよね。火曜クラブにてマープルの推理力を目の当たりにしたヘンリー・クリザリング卿が名付け親であるクラドック警部によって、マープルはこの事件に関わることになります。

この作品でのマープル像は「人間観察が得意な有能な頭脳の持ち主」という感じでした。

  • 1952年:『魔術の殺人』(未読)

1953年:『ポケットにライ麦を』

ポケットにライ麦を(クリスティー文庫) amazon.co.jp ↗
ロンドンの実業家フォーテスキューが紅茶のあと毒殺され、ポケットからはなぜかライ麦の粒が見つかる。殺人が続く不穏な屋敷でかつて自分が躾けた女中が働いていたと知ったミス・マープルが、童謡「6ペンスの歌」をなぞるような事件に乗り込む。

『ポケットにライ麦を』あらすじ

アガサ・クリスティお得意のマザー・グース(イギリスの有名な童謡)を取り入れた作品です。
この作品では本当に全然マープルが出てこなくて焦らされます!

怒れるマープルほど怖いものはない。マープルの執念が事件を紐解きます。
この作品のマープルは「人情味のある頭の切れる老婦人」という感じでした。

  • 1957年:『パディントン発4時50分』(未読)

1962年:『鏡は横にひび割れて』

鏡は横にひび割れて(クリスティー文庫) amazon.co.jp ↗
変わりゆくセント・メアリ・ミード村。越してきた映画女優マリーナ・グレッグの歓迎会で、彼女と話していた村の女性がカクテルを飲んで急死する。直前にマリーナが見せた「凍りついた表情」の意味を、ミス・マープルが聞き取りだけで解き明かしていく。

『鏡は横にひび割れて』あらすじ

私が一番最初に読んだマープルものです。
この作品のマープルの印象は「年老いて歩くのも辛い老婆が、自分も含め変わっていく世界を憂いている」という感じでした。

読書感想 -『鏡は横にひび割れて』(『半落ち』を添えて) 宵と泡沫 →

この作品の印象で他の作品も読んでいたため、牧師館の殺人でのマープルがかなり若く感じたんですよね。

マープルものはやっぱり、マープルの本拠地セント・メアリ・ミード村での話が周りのキャラクターの描かれ方も独特で好きです!

  • 1964年:『カリブ海の秘密』(未読)
  • 1965年:『バートラム・ホテルにて』(未読)
  • 1971年:『復讐の女神』(未読)
  • 1976年:『スリーピング・マーダー』(未読)

ここまで作品の印象をまとめてきて、マープル作品は時系列で再読したいなと思います。
作品の発表順で時系列が進んでいくようなので、全て読み終わったらまた読み返したいです。

今回、マープル作品の読む順番を調べて知ったのですが、『カリブ海の秘密』→『復讐の女神』だけはこの順序で読まないとネタバレになっちゃうみたいです。

次は書斎の死体を読むか、名作と名高いパディントン発4時50分を読むか。
まだまだ楽しみが残っていて嬉しいです!

白蛇と泡のイラスト

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