読書感想 -『白昼の悪魔』 白い砂浜、煌めく海、全員容疑者の宿泊者たち

2026年冬アニメの『死亡遊戯で飯を食う。』作風がすごく好みで、2週間限定公開だった映画『44:CLOUDY BEACH』も観てきました。

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(配信情報が来てる!もう一回見よう!)

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可愛い女の子たちがずっと水着で、おしゃれリゾートにいるんですが、絶海の孤島で殺人鬼がいる、誰が犯人かわからないという状況で疑心暗鬼になっていく。

ゲーム名にもなっているように、せっかくの海なのにずっと曇り。
本当はすごい目の保養になる舞台のはずなのに、ずっと不穏。

アガサ・クリスティ著の『白昼の悪魔』を読み終えた今、この二つの作品の雰囲気は似ているなと思いました。

今回も見事に真相は当てられず、流石のミスリードの女王。本当にすごい。
真相が分かった後と分かる前の二度美味しい作品だと思います。

どう勘違いさせられたか、全開ネタバレありで感想をまとめたいと思います。

※クリスティー文庫の裏表紙に書いてあるあらすじで島の場所は「地中海」と書かれているんですが、これがまさかの間違いで、島があるのはイギリス南西部。地中海だと思って読んでいたらなんか変だぞ、、となってきます。気をつけましょう!

白昼の悪魔(クリスティー文庫) amazon.co.jp
イギリス南西部の離島ホテル「ジョリー・ロジャー・ホテル」には休暇中のポアロをはじめ、多くのリゾート客が宿泊していた。
宿泊客の1人、元女優のアリーナ・マーシャルは、強烈な美貌で男を惹きつけ、夫ケネスと連れ子リンダがいるにもかかわらず、公然と若い既婚男パトリック・レッドファンとの親密な様子を見せつけていた。

『白昼の悪魔』あらすじ

もくじ

容疑者1:クリスチン・レッドファン

絶世の美女に、自分の夫が心奪われてしまう、可哀想な女性。

周りからクリスチンは高所恐怖症で「ピクシー湾に降りるハシゴはやめた方がいい」と言う話がされています。
メタ的ですが、この高所恐怖症だからこの人には無理、と思わせるところ、絶対嘘だと思いました。
私はこの部分だけでクリスチンが怪しいと思っていましたが、その他は全ての言動を信じ切っていました。ピクニックの時若干元気でしたが、夫が戻ってきて嬉しいとばかり、、

誰が見ても「暴力はふるえない」
よってクリスチンにはいくら殺意があっても、犯行は不可能だろうと考えられました。

ポアロからの質問に、「テニスに行く前にお風呂には入っていない。テニスの後ならともかく、時間もないし入りたいと思わない」と答えます。

【謎解き後】

まず、犯人は一人で実行したと言う思い込みがありました。
ロザモンドとケネスは共犯かもと思ったのに、、

自分の夫が、自分の目の前で他の女とイチャイチャしているなんて、普通に考えてぶん殴るか、関係解消しかないと思います。
なんでクリスチンは耐えられているんだろう、と言う違和感がむしろ伏線だったとは。

ポアロに対して「見てらっしゃるのね、色々と」と意味深に言っていたこと、最初読んだ時もこのセリフに違和感を持ちましたが、再読で分かる面白さ。
ポアロと話していて泣き崩れる演技、凄すぎる。全く嘘だと思わなかったです。

この時代、ホテルの各部屋に鍵がないの?それがめっちゃ違和感。
誰もが他の人の部屋に忍び込めると言う状況で初めて「リンダの時計を早める」と言うトリックが成立する。

「レッドファンの細君は4,5分遅れてやってきました」
リンダの時計は早く、ゆっくり歩いたとしても相当早くホテルに戻ったはずなのに遅れてテニスに合流する。
死体のフリをして、笠を切り刻んで、ハシゴを登って、走ってホテルに到着して、笠を暖炉で焼いて、風呂で肌の色を洗い流す。これを40分くらいでやってるの、マジで忙しすぎるが大丈夫か。

アリーナがどんな人物だったかをポアロが聞いた時に、ポロッと「ゆすり」と言う言葉を使ってしまった。
この言葉のために嘘の証言が増えていく、、

「ゆすられた側が殺されたのはおかしい」と言うポアロ評が重要だったとは、気付きませんでした。
パトリックとクリスチンの関係はどうだったのかな?クリスチンが惚れて手伝っていたのか、むしろ指示していたのはクリスチンの方だったのか、対等なビジネスパートナーだったのか。

容疑者2:エミリー・ブルースター

たくましく、スポーツマンタイプでハスキーボイスの女性。
アリーナを一目見た時、「あの女こそ、悪魔の化身!あたし、たまたまよく知っているんです」、怪しい。
いとこがアースキン家に嫁いでおり、アースキン卿が遺産を遺族に残さずにアリーナに渡してしまったことにとても腹を立てています。

アリーナをゆすっていた人物の声は低い、ガサついた「男性の声」でした。
でも、ブルースターもこの条件に当てはまるように思えます。

しかし、ポアロがブルースターのアリバイを証言します。

【謎解き後】

「こんなリゾート地で死体が出るわけない」
そう言っていた彼女視点で、死体発見時の様子が語られました。彼女はとても動揺していて、本当に可哀想。

ブルースターはかなり怖がりで、ピクシー湾のハシゴが登れない。
そして死体と一緒にされたくない。
そこをパトリックに利用されてしまいました。

板の橋の上で悲鳴をあげて足がすくんじゃう。実は今回の女性陣の中で一番可愛い存在だったと思います。

容疑者3:ガードナー夫婦

イギリスを片付けにきた、アメリカ人夫婦。
「ああ、そのとおり」夫が従順すぎるのが怪しい。

コーネリア・ロブスン(『ナイルに死す』の登場人物)からポアロのことを聞いていたという演出、粋ですね。

あの朝、毛糸玉を取りに行った夫がなかなか帰ってこなかったのが怪しい。
毛糸が指定の場所にないことが、絶対何かのトリックだと思いました。

【謎解き後】

毛糸玉全然関係なかった!ロザモンドの証言が嘘だったことを証明するだけだった。

妻のいない時のガードナー氏がイケメンすぎる。
ガードナー氏のポアロ評「細君と切り離せば、とぼけた顔で冗談も言う」

ケネス、ガードナー氏、ロザモンド、クリスチンの4人のテニス、萌えます。

容疑者4:バリー少佐

インドの話が長話になる、喉に引っかかるような胴間声のおっさん。

「あの妖婦(ヴァンプ)は?相当いけるだろ?」
「セックス・アピールだよ。イットというやつだ」
下世話なものの考え方をするが、庶民らしい感じもします。

事情聴取時、内心の楽しさは隠せていない。
あの日の朝はセントルーへ出掛けており、いざと言うときに事件に居合わせなかった。
セントルーへは、聞かれたくない電話をかけに行った「ある馬にかけてもらいたいと伝えようとしたが、繋がらなかった」怪しい。

出所のわからない(本人は競馬で当てたと言っている)大金が振り込まれている、怪しい。

「ピクニックは嫌いだ」として1人ホテルに残ったのも怪しい。

男なのも怪しい。

【謎解き後】

全く無関係だった!!そうだよね!!

容疑者5:スチーブン・レーン

50代の長身の聖職者、狂信者。
アリーナを見た後の発言「あの女は全身これ悪のかたまりです」

あの朝はハイキングに行っていて、アリバイはほぼなし。
パイプを持つ3人のうちの1人、怪しい。

精神病で施設に収容されていたという真実が発覚します。
「悪魔に対する強迫観念、女に形を変えた悪魔、バビロンの淫婦(緋色の女)への強迫観念・・・」怪しい。

ポアロが調べていた過去の未解決の扼殺事件2つは、レーンの教会の近くで起こっており、被害者はどちらも女性、怪しい。

【謎解き後】

全く無関係だった!!そうだよね!!

容疑者6:ホレス・ブラット

その場の中心的存在になろうとするが誰にも相手されない、車持ちの大柄のおっさん。
金があるともっぱら言いふらしている。

事情聴取後のポアロ評「あの男はね、何かにおびえている!」
パイプを持つ3人のうちの1人、怪しい。

後半になると重要人物になってくる。
出所不明の莫大な収入があり、ゆすりの犯人?ヤクの運び屋?怪しい。

【謎解き後】

ポアロが探偵だと知って、「スコットランド・ヤードは何をやっているんだ」と発言しており、警察を意識していることは明白。
絶対ポアロは仕事で潜入していると思っているようでした。
そんなブラット氏をポアロは「どこか妙にひっかかるところがある」と感じます。

ブラットは自身の麻薬密輸の足がついたと恐れていたわけですね。
ブラット自身は人と楽しく過ごしたいと思っているのに、自身の仕事がそれを許さない。自業自得ではあるのかな。

容疑者7:カワン家・マスターマン家

毎年一家総出の子供連れで泊まりにくる二つの家。

すぐに容疑者から除外されたのがむしろ怪しい。
でも最初の登場人物紹介にすら載ってないのも逆に怪しい。

アクロイド殺しの後遺症でそういうトリッキーな展開もあるかもと思っていました。

【謎解き後】

全く無関係だった!!そうだよね!!

容疑者8:ロザモンド・ダーンリー

ポアロのお気に入り(笑)
品がよく、ビジネスもできるドレスメーカー経営の女性。
日本的な日傘を持っています。番傘かな?おしゃれだと思って使ってもらっていて日本人として鼻が高いですね!

周りからは人生の成功者に見えていますが、本人は「夫がいない」ことに強い劣等感や孤独感を抱いていました。

ケン(ケネス)と幼馴染で、恋心を抱いていたようです。(ケンは4歳年上)
「カーッとなってぼくの首をしめたことがある」怪しい。
「クリスチンがかわいそう、だれかがなんとかしてあげなくちゃ」怪しい。
ケンに離婚を勧めるが、ケンは絶対に離婚しない。「わかったわ」怪しい。

あの日の朝、一緒にガル湾に行こうと誘うリンダに「けさはダメ。ほかにすることがある」この日の朝は本を持ってサニー・レッジへ(ピクシー湾の横)怪しい。

リンダに「あたしだけしか知らないことがある」と言われ、「うかつなこと言っちゃだめよ」怪しい。

ポアロには「お風呂には入らなかった」と証言します。

香水「ガブリエルの八番」をつけているが、ピクシー洞窟は場所も知らない、怪しい。

【謎解き後】

事情聴取の時に質問しなかったので、ポアロは元から、ロザモンドが犯人とは思っていないようでした。

ロザモンドは「ケンが殺したんだ」と思い込んだため、ケンを助けてあげるため、嘘のアリバイ証言をしてしまう。愛だね。

容疑者9:リンダ・マーシャル

殺人罪に問われた生みの母親を持つ16歳の少女。
「あの女はけだものじゃないか」「殺してやりたい、死んでくれないかなぁ」アリーナへ明確な殺意を抱いています。

ロザモンドに再会したパパは、若返ったように見え、パパが笑ったのはめったに見たことがない。アリーナがいなければどんなに楽しい休暇になっていただろう。

あの日の朝の、リンダの不思議な行動は絶対犯行に関係あると思いました。

警察にも朝は「海に入った」と読者には明確にわかる嘘をつきます。
メイドの証言からも、今朝泳いだのはケネスとパトリックだけ。

ポアロが見つけた暖炉の燃えカスは「変な形の溶けたロウソク、緑色の紙の破片とカレンダーの破片、ごく普通のピンが1本、髪の毛のような物質」

ロザモンドに対して「あたしだけしか知らないことがあるんです!」怪しい。

「ロザモンド、あなた、みんな知ってるみたいね?」
「あたしはぜったいに忘れない!」
悲しいほど、怪しい。

「自分が殺した」というポアロ宛の手紙、そして自殺を試みます。

【謎解き後】

ミスリードの女王が彼女を犯人にするはずがないんです。
読者にすぐ怪しいな、と思わせるわけがない。
でも、まんまと乗ってしまいます。この感覚がたまらない。

ポアロは暖炉の燃えカス、本棚の隠されていた本を見て、呪いを行ったと判断します。
他の誰かが同じく何かを暖炉で燃やしていたとは、全く気づきませんでした、、

ポアロにロウソクの呪いのことがバレたと絶望し、自分の呪いでアリーナが死んでしまったと思い込み、罪悪感で自殺を試みる。なんていい子なんでしょう。
助かって本当によかった!末長くお幸せに!

容疑者10:ケネス・マーシャル

つまらない結婚をするクセがある、40歳くらいの金髪のアリーナの夫。

パイプを持つ3人のうちの1人。
パイプを無くしており、ピクシー湾には折れたパイプがあった、怪しい。

手紙のタイプのアリバイが明らかに怪しい。
でも、手紙は絶対にその日に受け取った手紙からしかタイプできないものでした。

マーシャルの会社は破産寸前。
遺産相続目的か、痴情のもつれか。
ブラット曰く、信用していた相手に裏切られて、相手を半殺しにしたという。

【謎解き後】

一応、ケネスはアリーナがレッドファン夫婦の仲を裂くのを諌めていたんですね。
でも、恋をしているアリーナは聞く耳を持たない。
世間から見放された哀れな女をほおっておけない、騎士道精神あふれる性癖。

ポアロがケネスの部屋に顔を覗かせて、「あなたはテニスに出かける前に入浴しましたか?」「入浴?もちろんしませんよ!」「どうもありがとう、それだけです」閉まる扉「・・・あいつ、いかれてやがる!」この流れ、ギャグすぎる。

ケネスは「ロザモンドが殺した」と思って、ロザモンドのアリバイを作ってあげます。愛ですね。
末長くお幸せに!

容疑者11:パトリック・レッドファン

ポアロに「人間としての完成品だ」と思わせる人物。
純真素朴な性格で男女関係なく好まれるタイプ。

昔からこの島で遊んでおり、ピクシー洞窟を知っていた。

死体の第一発見者。
アリバイは完璧だし、アリーナを信奉しており、殺すわけがない。

でも男、怪しい。

【謎解き後】

まじで演技がうますぎます。ポアロから忠告を受けた時の態度が嘘だと思えないです、、
あの日の朝の不機嫌な態度も演技うますぎます。

「アリーナがぼくをここへ誘ったんです」嘘ばっかり、、

多少の金を持っていたアリスと結婚し、保険金をかけて殺す。
クリスチンとパトリックと、どっちが言い出したことなんでしょうね?

一枚の写真から裏が取れるのも面白いです。

以前、ミステリの驚きを数式で表してみました。

読書感想 -『五匹の子豚』・マイベストクリスティーを添えて 宵と泡沫

この作品を数式で表すなら、【 A+B×C ではなく (A+B)×C 】ってところでしょうか。

冒頭、スマグラーズ島(密輸船の島)のジョリー・ロジャー・ホテル(海賊旗ホテル)ができるまでの話が本当いいです。
こういう舞台設計がミステリを楽しむ上で欠かせないですが、うざくない程度に書かれていていいです。

最初のポアロ含め各登場人物が好き勝手に世間話をするくだり、めっちゃ好きです。

死亡推定時刻を意図的に操る、これは騙されますよね。しかも夫婦だと思い込んでいたのにそうじゃないなんて、、次のクリスティ作品の夫婦全部そんな目で見ちゃいそうです、、

「奥さんの敵はすべて女性だった」なぜ男に殺されるのか、わかるようでわかりませんでした。悔しい!

小ネタですが、ポアロがピクシー湾に行くのを怖がるの可愛いですよね。

ガードナー夫人のパズルのシーン、洒落が効いててほんといいです。
「解説は最後の章で!」「ああ、待ちきれないわ!」おしゃれすぎる〜!!

「かっこいい事件に思われた」「初めてではない」ポアロにしかわからないと思う、、

最後のダートムアのピクニック、すごく好きです!冒頭の世間話もですが、こういう独特な伏線のはり方と皆の心理描写がうますぎる。

最後の謎解きで、最初にリンダ、ケネス、ロザモンドが犯人ならどういう条件なら殺せるかを話しているところがすごくいいです。パトリックと同じく、その流れで真犯人に持っていくのめっちゃ急転直下でした!

めっちゃびっくりしたなぁ。ほんと人におすすめできる作品だと思います。
最後のロザモンドのセリフで終わるの、鳥肌でした!つまり名作!

白蛇と泡のイラスト

about うたかたについて

これまでのこと、すきなもの、この場所で綴っていきたいこと。よかったら、のぞいていってください。