読書感想 -『三体Ⅱ 黒暗森林』

日本語版『三体』の第一部の感想も書きました。

読書感想 - 『三体』(第一部) 宵と泡沫

第一部を読んだ後はかなり満足度が高かったので、すぐには第二部を読みませんでした。
( ´-` ) 。oO(この期待を裏切られたらやだなぁ)と思っていたんです。

いざ、重い腰を上げて読み始めてみたら・・・第一部を超える面白さ!
最高の読書体験をありがとう!!

日本語版の『三体』三部作、Netflixのドラマ第1シーズンのネタバレを含みます。

もくじ

第二部『三体Ⅱ 黒暗森林』読了

三体Ⅱ 黒暗森林(上)(劉慈欣) amazon.co.jp 三体Ⅱ 黒暗森林(下)(劉慈欣) amazon.co.jp
三体文明の侵略艦隊が地球へ向けて出発した。到達までおよそ400年。人類の通信も研究も、地球に送り込まれた陽子サイズのスパイ「智子」にすべて筒抜けだった。
唯一覗けないのは、人の思考だけ。人類は4人の「面壁者」に命運を託す前代未聞の戦略に打って出る。その一人に選ばれてしまった無名の学者・羅輯は自身の知識で人類を救う方法を考える。

『三体Ⅱ 黒暗森林』あらすじ

三部作の中で第二部が最高傑作と言われているの完全同意です。
めちゃくちゃ面白かった!
このエンタメ感は、第一部でも第三部でも味わえません。

羅輯が他の主人公とくらべて、感情移入しやすいキャラだったからかもしれませんね。
ミステリ要素もあって、作者の手のひらで散々転がされて気持ちよかったです!
200年後に飛んでからは特に想像もできない世界で面白かった!

第二部の感想は物語の「起承転結」に沿って、物語を振り返りながら思ったことを書いていきたいと思います。

【起】 宇宙社会学 〜 面壁計画

最初の楊冬の墓の蟻の描写と、最後の葉文潔の墓の蟻の描写がめっちゃエモくて好きです。
「葉老師」「小羅」「冬冬」みたいな中国語的な呼び方もエモくて好き。

たまたま葉文潔と話してしまったから、羅輯は冥王星までたどり着いてしまったんだな〜と。Netflix版では偶然ではなかったけどw

宇宙社会学の公理1:生存は文明の第一欲求である

葉文潔個人は、文明を破壊させようとしているけど、文明という一生物としては生存が第一欲求であることはわかる。
それによって共倒れしてしまうこともよくあるのだろう。

宇宙社会学の公理2:文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量は常に一定である

ハビタブルゾーンは限られているし、有機物が生存しやすい岩石型惑星は限られている。
呼吸しているだけで酸素を消費しているが、最終的には全ての粒子は質量保存の法則で消滅せずに存在している。

第三部の最後の小宇宙から物質を戻すのも、ここに通じているような気がしました。

猜疑連鎖と技術爆発

<自然選択>たちがたどった猜疑連鎖と宇宙に飛び出す技術爆発。
隣人の存在に気づいてしまうと、自分達の生存のために先制攻撃に出る。諸行無常。

嘘を知らない三体人たちと誠意を伝えられない地球人たち。
人は他人と本当に通じ合うことは出来ないんだろう。

三体人の言葉として描かれている太文字が、AIと話しているような感覚になって興味深いです。

章北海と呉岳の<唐>の描写ってなんだったんでしょう。
読んでいた時に丁度MBTIを勉強していて、章北海がF型、呉岳がT型ぽくって面白かったです。

章北海の人柄を伝えるために必要だったのかなぁ。
父親との会合が一番人柄を表していたと思う。

張援朝と楊晋文、苗福全のそれぞれの墓の話。
物語には影響なかったけど、主人公格以外の一般市民の日常として描いていたんだと思います。
自分だったらどうするだろうと考えましたが、張援朝と同じような道を選んでいるような気がする。

大史の息子の逃亡ファンドがめちゃくちゃ胸糞悪い。
張援朝が被害に遭っているから自己嫌悪な気もするけどw

大史が出てきてからがかなり面白いです。
やっぱり大史のキャラの存在感が別格すぎる。
安心感と優しさと洒落がきいてる感じが素晴らしい。

羅輯の架空の彼女の話は、結構日本の文学小説っぽいウェット感だったと思います。
嫌いじゃない。むしろ好き。

そして明かされる面壁計画。
ぶっちゃけ、脳回路も電気信号だから、ソフォンに暴かれるのでは?と思うのだが、そこはご愛嬌。

人類の命運を賭けて、そんな計画で本当に大丈夫か?と思ったが、結末的には大丈夫だった!ってなるくらい、第二部は面白い。
羅輯が面壁者になる流れは、予想できましたが、かなりワクワクして面白かったです。

【承】 隠居暮らし 〜 呪文

各破壁人好きなんですが、「羅輯自身が破壁人となる」は流石に主人公補正すぎるのでは。面白かったから良いけど!

フレデリック・タイラーと蚊群計画

一千機の特攻隊とスーパーボム・冬眠のブレイクスルー。
読み終わった後の印象的に、タイラーが一番面壁者らしかったような気もします。

神風特攻隊とアルカイダに会いに行く流れは、なんとなくご都合主義。
実際、もし「特攻隊となります」と主張する人たちと会ったとしても、彼は地球を裏切ったのではと思う。「母さん、僕は螢になります」は何度も引用されていたが、日本人からすると偽善でしかない。
「憎しみは黄金やダイヤモンドより貴重だ」は確かに、と当事者じゃないから思えます。

そして全機のリモート制御、水資源の探索、地球三体協会の存続の提案。
なぜ衛星の探査?って読者に思わせるようじゃ隠せていませんね。

タイラーとフォン・ノイマン。
ノイマンはVRゲーム上は結構血気盛んなのに、現実ではめちゃくちゃ礼儀正しいの萌えます。

タイラーが最期、羅輯のところで死ぬのが良いです。

「俺たちはなんでこんな莫迦げた状況に追い込まれたんだろうな」

羅輯みたいな肝が据わっているやつじゃないと絶対務まらないわ。

レイ・ディアスと巨大水爆計画

小さな太陽を作る。
後の時代に標準装備される技術として、ほんと必要な人材でした。

『太陽恐怖症』をなぜ発病したのかがよく分からなかったです。
原爆を超える悪魔の兵器であることを意識してしまったから?

ディアスと墨子。葉巻とアルコールの匂い。
計画の正体は、水星をトリガーとした三体との相打ち。
悪くないと思う。私は元々人類絶滅派なので。

咄嗟に『ゆりかごシステム』の方便するディアスがなんとも人間らしい。
そして人民に殺されるところも、最期まで人間味があって憎めないです。

隠居している羅輯の「ワイン樽事件」はほんと胸糞なので、この頃の羅輯は嫌い!
運命に対する足掻きなのはわかるけど、周りが可哀想です。

でも、大史が「理想の彼女」を探してくる展開はワクワクしてめっちゃ好きです。
さすが中国、人口の多さが伊達じゃない。中国なら見つかりそうに思えてきます。

モナリザの前での視線コミュニケーションの提案がエモい。
三体人には表情のコミュニケーションってないのかな?思ったことそのままダイレクトに相手に伝わるから無いか。面白い。

リンギア博士とフィッツロイ少将の「刷毛」の発見までの流れ、かなり好きです。
この二人、巻頭の『人物紹介』の中にいてもいいと思うくらい重要人物だと思うんですが、なぜいないのか!
その後も学者と軍人がその役に就くのが”歴史”って感じでいいです。

荘顔と娘が冬眠し、冬の湖の中で『暗黒森林問題』を悟る羅輯は最高にエモくてカッコよかった。元から頭が良い。
『重篤な星空恐怖症』とはなんだったのでしょう?第三部にその描写あったかな?

そしてついに面壁者としての仕事「呪文」を発動し、冬眠へ。
この時は呪文の意図が全然分からず、ワクワクしました!
羅輯を暗殺するための『軽インフルエンザ作戦』はかなりいい作戦だったと思います。ETOやるな!

張援朝と楊晋文、苗福全と配給制度の描写が生々しい。
老楊は宇宙に骨をまき、苗福全は自分の鉱山跡深くに骨を埋める。結局は全部一枚の絵に・・・。

丁儀は核融合を成功させ、冬眠。
章北海は”弾”を用意し、非媒質放射ドライブ反対派への完全犯罪の暗殺を行う。
この暗殺完遂までの流れがトマス・ウェイドとは違ったやばい男な感じ出ててよかったです。

ビル・ハインズと精神印章

ハインズは計画の「解析撮像機(リゾルヴィング・イメージャー)」の実現のために冬眠へ。

目覚めたハインズを迎える山杉恵子(中国だとフルネーム記載なの違和感すごい)はこの時どんな気持ちだったんだろう。
恐ろしく野蛮な方法で人間の脳をシミュレートしたスーパーコンピューターのホログラムディスプレイの中の、なんと幻想的なことか。

なぜハインズが敗北主義を精神印章させたかったのか、全然変わらなかったです。
『時計じかけのオレンジ』も読んでないから分からない!悔しい!
「神は死んだ」を刻印したかった、ってところから推察するのでしょうか?

ハインズとアリストテレス。
根っからの敗北主義者が自分の思想と世界の思想を統一させようとした、ということでいいのでしょうか?刻印族と精神印章マシンは結局どうなったのでしょうね。

他の面壁者とは逆に、破壁人が自殺を選ぶという結末。
ビル・ハインズは面壁者として世界に与えた影響は・・・普通に迷惑をかけただけだったか。

【転】 未来と水滴 〜 呪文発動

200年後の未来の描写がすごいと思います。
中国語と英語が融合しているのも面白いし、地下都市を築いているのもなるほど、農業を忘れてしまっているのも面白い。

後書きで<大峡谷>って翻訳をどう表現するかで悩んだという話があり、的を得ていて良いネーミングだと思いました。

宇宙艦隊が国と同じ、もしくは上回る発言力を持つ独立勢力になっているのは理解するのが難しい。
東京都が独立したと考えればいいのか。

一般人になった羅輯と大史の戯れ合いがすごくいい。
ファイナル・デスティネーション的な怒涛の展開が全部大史に助けられるの面白すぎますw
大史の安定感と気さくさとかっこよさが際立つ。

章北海の「常偉思中国宇宙軍司令官から、よろしくとことづかりました」のシーンがエモすぎてたまりません。
時を越えた思いってずっしりと来る。

<自然選択(ナチュラル・セレクション)>マジで名前カッコ良すぎるだろう・・・。
深海状態で加速に耐えるのもSFらしくていいです。

丁儀と水滴。丁儀はなんか物語の奴隷感強いです。
強い相互作用で絶対的に滑らかな鏡面。
顕微鏡の倍率変えていくの絶望感伝わってきてよかった!
宇宙艦隊壊滅の描写マジで壮大でしたね・・・すげぇぜ・・・。

<自然選択>での視線コミュニケーションの描写、なんかすごい伝わってきた。
暗黒森林の模擬としてわかりやすかったです。

暗黒の戦い。
ここで<自然選択>が負けてしまうのが、主人公補正が無くて、章北海は優しかったってのが伝わってエモくていいです。

そして太陽を封じる水滴と51年前に破壊されていた惑星の発覚で掌返しの民衆たち。
これだから大衆は嫌いだ!

【結】 暗黒森林理論

呪文の種明かしと三体人に気づかれなかった第二の作戦。
読者も騙せてるのがすごい。本当に羅輯は自殺でもするんだと思いました。

慌てて言いなりの三体人が可愛い。
いい結末だったのに、第三部のあの様はもう・・・。

完璧なオチだったと思います。
最後の1行鳥肌でした・・・!

エンタメ感が最高でした!
Netflixの方では面壁計画自体が原作とは変わりそうで、またワクワクしながら楽しめそうです。

では、第三部感想に続きます!

読書感想 - 『三体Ⅲ 死神永生』 宵と泡沫
白蛇と泡のイラスト

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