幼児とアンパンマンの関係について
考えたこと
2023.11.04
私は子供を産む予定は無いが、30歳を越えると、身近で子供を育てているエピソードを聞くことは多い。 そこで耳にした話で、最近読んだ本に関連しているかもと思ったことがある。表題の「アンパンマン」についてだ。こんな研究は既にされていると思うのだが、本の感想と合わせて考察していきたいと思う。
人から聞く話の中で興味深いのが、子供を育てていて「アンパンマンがあって助かっている」だとか「子供がアンパンマンが好きである」だとか「キャラ物を知らせずに育てていきたいと志していたが、保育園でアンパンマンの存在を知ってしまって反応するようになってしまった」だとか、乳児から幼児になるまでに必ず存在する“アンパンマンとの邂逅 ”エピソードである。
なぜ、アンパンマンは赤ちゃんの心を掴んで離さないのか。
その一つの解明として「声」の仕組みが関係しているのでは、と思ったのが、先日図書館で借りてきた新書「声のサイエンス」を読んだ後の感想だった。 声の仕組み、声を作る・聞いて起こるさまざまな事象についてとても興味深かった。
声のサイエンス(山﨑広子)
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多くの日本人が自分の声を嫌いなのは、「脳がその声を認めていない」かららしい。脳が望む声=本当の声があり、本当の声を出すためにどうすれば良いのかを学ぶことができるので是非読んでみてほしい。
声は音である
聴覚は視覚と違ってかなり無自覚な器官で、自分の体の中で出ている音や外から流れ込んでくる音、膨大な音を常に処理している(寝ている時も!)。
人と話していて、相手が良いことを言っているのになんとなく受け入れられない、イラつく、そんな思いをしたことはないだろうか。逆に、よくわからないことを言っているのに、なぜか納得させてしまう人が周りにいないだろうか。
「快、不快」を感じるのは、理屈ではなく本能の部分 。 声は、言語を処理する脳の新皮質を通って、脳の中心にある原始的な旧皮質にも届く。旧皮質で無意識裡(裡=裏)に「心地良い・悪い・好き・嫌い」を判断しているらしい。
そのため「声」は、発している言葉の意味を無視して 感情を揺り動かすことができる。それは自分の声 も同様だ。
胎児は「妊娠六ヶ月後」から音を聞いている
胎児は羊水を通して母親の声を聞いており、生まれてすぐに母親の声に反応するそうだ。 それだけでなく、母親の話す母国語の響き に反応するようになるらしい。赤ちゃんは、胎内にいるときに既に言葉を理解する過程の「言語の習得」が始まっている。 母親の方も自分の子供の声を無意識に覚え、他の赤ちゃんの泣き声の中から無意識に反応してしまうらしい。
赤ちゃんは産まれる時、視覚は未発達な状態だが、聴覚はかなり発達している。そのため、寝ている状態であっても入ってくる音を猛スピードで分析し、蓄積している。 まだ言葉がわからないと思わず、赤ちゃんが胎内にいる時から汚い言葉を使わない方がいいのかもしれない。
この頃の子供は「音」に対して鋭い感覚を持っているため、4歳前後までに音程と音名を一致させると、「絶対音感」を得ることができるらしい。 この能力によって、どんな難しい発音の言語でも習得することができる。
音は全てが聞こえているわけではない
人間が感知できる音のヘルツは決まっており、それ以上の音、それ以下の音を認識することはできない。 だが、その「認識できない音」も体に影響を与えているようだ。 NHKでやっていた『ヘウレーカ』でアニメのAKIRAを題材にした「ハイパーソニックエフェクト」の検証を行なっていて、かなり興味深かった。
ハイパーソニック・エフェクト
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耳に入ってきた音について「何の音であるか」を分析している脳は、その膨大な情報を処理することに力を抜きたがって おり、可能な限り処理をテンプレート化させている。 雑踏の中でたまたま聞こえた「自分の興味のある話題」はまるでフォーカスするように 意識を向けることができる。これは意識して聞いているわけではなく、脳内の音の処理でその部分が「テンプレート化」されているからだ(カクテルパーティ効果)。
また、聞き取った音の中から、雑音にかき消されたり聞こえなかった音は脳が補完してくれる という。 先日、東京蚤の市で演奏していた手回しオルガン奏者のKoji Koji Mohejiさん(いつも出演楽しみにしています!)も、手回しオルガン用に曲をアレンジするときに、27音のオルガンが出せない音はあえて消して、聞いている人に委ねる部分(脳内で再生してもらう部分)を作っているとのこと。
Koji Koji Moheji チャンネル
youtube.com
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聞こえるはずの音が無い時 でも、知っている曲や知っている単語を聞いた人はその部分を脳が補ってくれて、勝手に聞こえる 。 よく頭の中で曲がずっと鳴り続ける現象(イヤーワーム現象)があるが、その時は実際に耳で聞いているような脳波になっているそうだ。
声にはその人の全てが詰まっている
声を聞いただけで、その人の身長、体格、骨格、性格、生育歴、体調、心理状態を知ることができる。中国には「声相」という声からその人を分析する易学があるらしい。
実は「声を出す器官」というものは存在しない。 声は肺に取り込んだ空気を、本来は呼吸器である「声帯」の幅を調整して吐き出したものを、口内や身体中の全てを使って自分の声 として出している。
男性は第二次性徴期に声帯が約7mmも長くなり、1オクターブほど低い声になる。(女性も約3mm長くなり、声変わりがある) この声の変化は、低い声ほど体格が大きく強いイメージを持たれることで繁殖に有利になったから受け継がれていると考えられている。 そして衰えてくると、声帯の柔軟性がなくなってきて固くなり、しゃがれた声になっていく。
感情が声に乗る裏には「表情」があり、目を閉じたり眉を下げるだけで少し音程が下がり、顎をひいたり出したりでも変わってくる。 私たちの脳は、無意識に相手の声の情報 を分析しており、電話で声を聞くだけで相手が不機嫌であるのか、笑っているのか、元気がないのかもわかる。なかなかすごい。
聴覚フィードバック
人は「自分の意志で声の出し方を調整すること」はできない。 もちろん、大きい声で出そうとか、囁き声で出そうとか、甘えた声を出そうとかは意識しているが、実際に自分の声帯を何ミリ開けて口内をどのくらい開けて・・・とかは意識して行なっていない。
意図通りの声が出せているかは自分の発音した声を聞いて脳が無意識下で判断しており、出せていない場合は声帯の隙間を調整したり、出せていたら安心したり、脳は常に自分の声を聞いて処理している。
乳児は聴覚だけは発達しているが、実際に言葉を出せるようになるには数ヶ月かかる。 それまでは、ミルクを飲みながら呼吸ができる霊長類の多くが持つ特徴 を持っている。成長すると息を吸いながら声を出すことはできなくなる。
成長が進むにつれ、徐々に声を出す練習を始める。 ここでも聴覚フィードバックが発生し、自分の出した声が「自分が出したかった音」なのかを分析して学習・テンプレート化し、徐々に無意識下で言葉を話すことができるようになっていく。
エンタメ性のある発音“アンパンマン”
声を出せるようになってきた幼児は、「破裂音」を発音することが楽しいらしい。
子供はまず「ア」「ン」「マ」を発声できるようになる。 そしてマ行やパ行は「口を閉じて開いて出す音」であり、特に破裂音は難しく、それを正しく出せると脳も嬉しい 。
それを何度も感じることができる単語を繰り返し繰り返し発声し、練習するようになる。・・・そう、それが「アンパンマン 」だ。 アンパンマンは、東南アジアの子どもたちにも人気があるそうだ。
「あんパン」とは、あんこが入ったパンである。 その概念を知らなくても、東南アジアの子どもたちを魅了してしまう言葉、アンパンマン。それが幼児向けのコンテンツを展開しているとなれば、もう抗うことはできないだろう。
幼児を魅了してやまないアンパンマンの魅力は、声の仕組みからもあるのかもしれない。 人類の叡智、奇跡の産物と言えるであろう。
丸が三つ並んでいたら、それは「アンパンマン」
先日聞いた子供の話で衝撃を受けたのが、点字ブロックを見て「アンパンマン!」と指差した子供の話だった。 他にも、親子でスーパーに入ると、子供には入り口からはまだ見えないはずのアンパンマンの商品に真っ先に到達するらしい。なんて恐ろしい吸引力なんだ。
アンパンマンのあの形状も、子どもにわかりやすく、認識しやすいようで、色もわかりやすい配色になっているらしい。なんかもうすごいと思う(小並感)。面白い!
おわりに
ファミレスで「アンパンマン!」と喜ぶ子供の声が聞こえてくると、なんとも微笑ましい気分になります。 幼児に対するアンパンマンだけでなく、もしかしたらまだ見つかっていない「大人も魅了してやまない奇跡の存在」も、今後出てくるかもしれないです。
そう思うと、まだ出会っていない未知の存在に対して、期待せずにはいられない・・・! まだまだ世界には到達できていない境地があって、(それは地獄の入り口かもしれないけど)ワクワクしますね・・・!( 」゚Д゚)」< グレートジャーニー!
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